帰宅して早々ブーンという羽音でギョッとして見ると、かの悪臭で名高いカメムシ御大がいらっしゃった。妙に角ばったフォルム、やけに鮮やかな緑色かと思えば汚らしい茶色だったりし、大発生して道路をうめつくしたりもする、あのカメムシだ。
私はカメムシが大っ嫌いで、生理的な嫌悪感はゴキブリと同等である。あの角ばったフォルムは到底仲良くなれそうにない。そのため速やかにここから退出していただきたかったが、あいにく彼らは非常にナイーブなためティッシュで掴むような無作法を働くと悪臭を放つ。本当に扱いづらい奴等だ。
まずは情報戦だとばかりにインターネッツのちからを借りると、ペットボトルを使ってカメムシキャッチャーなるものが作れるそうである。ペットボトルの中間あたりをカッター等で切断し、その上側をひっくり返して下側にはめ込むそうだ。そしてそのカメムシキャッチャーの上部をカメムシにかぶせるようにして壁につけたままカメムシの足元を崩すように移動させると、カメムシはカメムシキャッチャーの中に落ちてしまう。カメムシにとって足元を掬われることは無作法には当たらないようで、かのコリアンダー臭も発しない。上部をひっくり返してあるため返しのようになって、カメムシは未来永劫出てこれないのだという。
しかしはてな?これで捕まえたカメムシはどうやって逃すのだろう。そもそも逃すことは想定していないのだろうか。ペットボトル内に入って出られなくなったカメムシが息絶えるまで一緒に暮らすしか無いのだろうか。
一抹の疑問は浮かんだがこうしてつべこべ言っていても仕方がない、ようし作るかと目の前の空きペットボトルを持って移動したその先には使用済みの洗った紙パックがおいてあった。ずぼらなため、洗うだけ洗ったら放置していたのである。
これだ、と思った。カメムシキャッチャーと呼ぶにはあまりにも紙パックそのままだがさっそく紙パック上部を完全に開いて装備し、カメムシに接近する。要領はカメムシキャッチャーと同じでカメムシにかぶせるようにして、足元を崩すように壁にそって動かすだけだ。
へっぴり腰で天井に紙パックをひっつけて動かしているとカラカラという硬い音が紙パック内に響き、ナイーブの権化たるカメムシを脅かさずに穏やかに捕獲に成功した。この紙パックの良い所は、カメムシを逃すのに逆さまにするだけでいいということである。あらかじめ窓を開けておいたのですぐさま紙パックを逆さにして必死で振り回す。無事かの憎きカメムシにご退出いただく事ができた。
今年からはカメムシに怯えずに済みそうだ。同居中のカメムシを穏便に退去させる方法にお困りの方はお試しあれ。オチは無し。とっぴんぱらりのぷう。