尾玉なみえって、もう天才というか常人とはかけ離れ過ぎてすごい存在なのだと思う。
最近の作品では、なみえはその濃い世界をわかりやすく表現して、ずいぶん気を割いてくれているのだと痛感する。
ジャンプの読みきりでやってのけた「ヒロインのワキガで主人公のおちんちんがおっきして二人は変身して巨大獣と闘う」なんて濃さは、常人には常用できず、耐えられないのだ。そこはナウシカの浄化された世界に似ている。常識的な漫画のコードに毒された私は、尾玉の真に濃いところに触れると肺から血を噴き出して倒れてしまう。そして読者は絶え、なみえは打ち切りの憂き目にあう。
孤独ななみえは、内臓をやっちまいながら、特濃の世界を我々に向けて翻訳する術を得た。それが『マコちゃんのリップクリーム』なのではなかろうか。『マコ』では今までの連載において登場したモチーフが幾度も連続して現れる。家族(変な両親)のモチーフ、小学生が変身するモチーフ、モテナイ人間のモテナイが故の変態的行為のモチーフ。男と男のモチーフ。どれも洗練され、難解な濃い尾玉汁が啜りやすい構造になっている。