2012-02-26

http://anond.hatelabo.jp/20120223211007

義務教育留年制」は、もちろん「必要な内容」が身についていない生徒を進級・卒業させるという無責任状態を是正し、保護者教員責任を負わせるということではあるし、考えようによっちゃ真っ当な意見なんだけど、現実の政策としては以下の理由で実現が難しい。

まず、「留年」した生徒は、下の学年と一緒になる……上の学年で「もてあました」生徒が下の学年の生徒の中に入るということを、あなたが下の学年の生徒の保護者ならどう思うか?

では、留年した生徒は、取り出して一人だけを対象に授業するか?

もちろん、それは無理だ。教員は在籍生徒数に応じたクラス数×2でしか配当されない。留年制のために別クラスを作る余裕などない。

本当は一人一人に対応が必要な、障害のある生徒に対してだって、十分な数の教員配当されていない現状がある。人件費の増大が教育予算を圧迫している中で、更なる教員の増加を求めるのは難しい。

また、「集団の中で教育する」のが学校という場の教育機能の中でももっと重要機能の一つであり、これをやめるなら別に学校に来させる必要自体ない。その意味では、留年した生徒の親は、家庭教師を付けるなりして対応するのがよい。……が、そんな親の子なら、そもそも留年などしていない。

結果、「留年」した生徒に「十分な教育環境」を用意することは難しい。

で、その生徒がまた「留年」したとする。翌年も、また翌年も。一体いつこの生徒は「義務教育」を終了するのか。保護者は、自治体は、その生徒に「教育」を受けさせる「義務」から、いつ解き放たれるのか?死ぬまでか? たとえば、20を越えても義務教育を終了しないその生徒が、まじめに小学校に通ってくるか? そんな期待ができるだろうか?

要するに、「義務教育留年制」の導入とは、小学校すら卒業しない連中を世の中に普通に解き放つということと同義にしかならない。それで世の中が良くなるのか?「学校」に在籍する生徒の「成績」は向上するだろう。だが、それが社会にとってよい結果を生むかどうかはまったく別の問題だ。

教育行政についての門外漢が、「義務教育でも留年させればいいんじゃね」というのは、まだ仕方ない。だが、行政の長たるニンゲンが、真顔でそういうことを言うとなると、「ああ、この人は部下の(専門職の)人間から、まともに意見を聞くこともできない残念な上司なんだなあ」としか思われない。

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