2011-03-26

SCRIBBLES IN GRAVEYARD

「そうは言っても気になるものはしょうがない」

彼女淡々した口調でどんよりした空の上で言った。

「アレが存在することが、現在の我々と何らかの関係があることだけは確か…だから調査を行うことの何がいけないの?」

そう別に興味がないわけではない。ただ既に機械と体をなした祈り手たちの熾烈な抵抗を遮ってまで行うことなのだろうか。彼らはたとえ血と肉を失っても、魂に導かれるがままに働いている。何のために?分からない、でも意志がないなどと誰が言えようか?現にこうして逡巡する我々自体も行動という面で見れば彼らと違わないのだから。時折、烈火のごとく攻勢を見せたかと思えば、何かに迷い、口をつぐんだように無抵抗であることも珍しくない。

「調べること自体に反対はしない」と頼りなさげにつぶやく

「でも、彼らの考え方にだって理由はあるんじゃないんのか?」

「考え方?」彼女は明らかに馬鹿したように聞き返す。

そうだ、確かに「考え方」といったカビの生えた概念は相応しくない。

はいえ、結局、古い認識のままにいるこの自分と、彼らの間に何らかの親近感を見出ししまう。いつまでたってもこの仕事には慣れない。

明日は先遣隊が帰ってくる。彼らの報告待ちながら、この暗いフロアにいるのは奇妙な気分だ。

それにしても彼女の割り切り方はやはり人以上の何かの由縁なのだろうか。それとも彼女の方がより良く理解をしているのか。あの肉無き存在たちを。

両脇に提げた得物をテーブルにそっと置き、その切れ味を確かめる。いづれにせよ、入念な準備は必要なのだ。それは良く理解している。

意志、それは果てたものとしても残りつづけるのか。だとしたら、自分の意志がその肉体の延長として存在していることも怪しいのかもしれない。

「妙に慎重なところは長所として認めよう」彼女上司でもないクセにいつも偉そうに話す。文句はないさ、仕事仕事だ。

あなたバックアップにまわって。私があの錆びついた竜と対峙するから。」

そう淡々と、言いながら彼女寝床に戻っていった。

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