2024-01-09

最後の日のアイーダ

Why do you always come to see me only on the last day?(何故あなた最後の日にしか私に会いに来ないの?)」

アイーダが怒った顔で僕にそう尋ねる。

「いつも最後に1番大切な君のことを覚えて国に帰りたいからだよ。」

と僕は答える

アイーダは呆れた顔をして僕より少し上の宙を見つめる。僕はその時の呆れたアイーダの顔が大好きだ。

誤解のない様に言うが、アイーダマッサージショップ店員で、僕はただの顧客だ。

半年に1回タイに訪れるが、いつのからか最終日は毎回このマッサージショップを訪ねてアイーダに旅の疲れをほぐしてもらう。

「1番大切な人なら1番最初に会いたくなるでしょ?違う?」

アイーダは諦め混じりの声で僕に話しかける。

彼女マッサージは僕の体と相性が良く、他の高価なマッサージ店も試したが、1番ここが性にも合っている。しかし、それとは別に僕はアイーダクルクル変化する表情に恋をしている。彼女タイ人だが、パキスタン人の父親を持ち、タイパキスタンハーフだ。英語も堪能で、冗談の様なやり取りにもしっかり付き合ってくれる。

タイに来るにあたり、彼女のことを忘れたことはないが、いつも上記のやり取りをしたいからわざと最後の日だけ彼女のところに訪ねることにしている。いつも彼女は不満げだ。そしてそれがまた良い。

彼女との付き合いはかれこれもう3年になる。彼女タイの中でも日本人街が近いエリア仕事をしており、何人かの常連日本人顧客がおりそれらの客の愚痴をいつも聞かせてくれる。

「どうして日本人あんなに温度にうるさいの?エアコンが弱くて暑いとか言ったと思ったら、マッサージオイルが冷たいって文句を言うのよ?合わせたらちょうどいいじゃないの。」

無茶苦茶なことをプリプリしながら言うアイーダに僕は思わず笑ってしまう。

「次はタイに来たらちゃんと1番最初に顔を見せに来てね?いい?」アイーダ真剣な顔で言い聞かせる様にそう言った。

「もちろんだよ、次は1番始めに君のところに来るね。」僕は調子よく笑顔アイーダに答える。

アイーダはじとっーとした視線を向けつつ完全に疑った目を見せている。

アイーダ祖母世界をまたにかけるツアーコンダクターとして働いており、アイーダもそんな祖母に憧れていろんな国に行ってみたいと言っている。日本にもいつか行きたいと言っているが、来ら時は必ず連絡してねと伝えてある。

「でもあなたちゃんと迎えに来てくれるの?私の旅行最後の日に来るんじゃないの?」また少し怒った顔でアイーダが言う。

僕はハハハアイーダに笑い声だけ返す。

こんな関係でも僕はアイーダのことを大切に思っているが、その事は伝えない。その方がきっとアイーダと長く付き合えるからだ。僕とアイーダはこれ以上仲良くなる必要が無いし、その方がいい。

アイーダにはサポート必要としている幼い弟が2人おり、彼女タイから離れることはできない。弟達が大きくなったら彼女自分の好きなことをするんだと言って仕事で稼いだお金を貯めている。

もし本当にアイーダ日本に来ることがあればその時だけは最初の日にアイーダ会いに行こう

そして喜ぶアイーダの顔を楽しむことにしよう。

から今は最後アイーダのままでいい、彼女が怒っても。

シャム踊り子

https://anond.hatelabo.jp/20240107070705

雨の涙

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花の街のニュウ

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記事への反応 -
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