2023-03-23

さえない人生

 小学3年生のとき中学受験塾の入室テストを受けたら、選抜クラスに入ることができた。はじめて「得意なこと」ができた気がした。でも、自分がたいして頭がいいわけじゃないと気づくのも早かった気がする。小さな校舎だったけど、俺よりもっと勉強ができる子は何人もいたからだ。受験では運よくそれなりに入試難度の高い中学に入れたけれど、それは自分の唯一の「得意なこと」が、その学校では「苦手なこと」に変わってしまうことを意味していた。

 それからずっと、勉強より得意なことが何かないか探し続けて生きてきた。運動神経がよくないのはもう知っていた。音楽ができるわけでも絵が描けるわけでもない。高校生とき(男子校だったからだけど)ほとんどの同級生より早く彼女ができたのは嬉しかった。でも、長続きしなかった。振られたショックで大学受験勉強も後半からほとんどできなかった。なんとか大学には進めたけれど、学科にもサークルにもなじめなかった。大学での勉強自体は楽しくて修士課程に進んだけれど、博士課程に進む勇気は出なかった。頑張って公務員試験を受けて(結局筆記試験が一番得意だった)、地方公務員になったけど、事務仕事があわなくてやめてしまった。結局、中学受験塾で勉強を教えて生きている。

 30歳、金なし彼女なし独身、今の会社出世もできないだろうし、転職も難しいだろう。振り返ってみると、小3のときにできた「得意なこと」に振り回されて生きてきたような気がする。それならもっと得意な人がたくさんいることを認めた上ではじめからもっと勉強にすがって生きればよかったのかもしれない。さえないなら、さえないなりの生き方がほかにあったんじゃないだろうか。

  • 襟立オンナ「…二番じゃダメなんですか?」

  • 中学受験の講師って、どこへでもピポッドできそうな気がするのは俺だけ?

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