2021-10-30

世界の海運市場で何が起こっているのかを簡単説明する

海運市況というのは長らく低迷していた。

10年代あたりは、欧米航路を中心に大型化の一途を辿るコンテナ船のスペースに対して貨物絶対量が追随せず、加えてリーマンショックという追い討ちによって完全に供給過多の様相を呈していた。

この頃の海上運賃といったらまさしく駄賃のような有り様で、日本東南アジア向けならコンテナ1本300〜500ドル、隣の韓国台湾向けなら荷主によっては2ケタ台や1ケタ台もありえる世界だった。

海上運賃というのは全世界の船会社単一市場形成している(ようはプレーヤーが少なく緩い寡占状態なのだ)が、

そのことが逆に災いし、大口荷主の定期輸送を巡って無茶な価格競争が続いた結果、船会社の採算もまた悪化の一途を辿っていった。

それまで競合だった日本郵船・商船三井川崎汽船の3社がコンテナ定期船事業合弁会社ONE統合するという驚愕決断を下したり、韓国の韓進(ハンジン)という船会社が潰れ、洋上に積んだままとなった製品行方を追って荷主がやきもきしていたのもこの頃だ。

当然日本企業コスト削減の至上命題の下、海上運賃を叩きに叩いていた。

潮目が完全に変わったのはコロナである

実体経済強制停止という未曾有の事態を前に、船会社各社はここぞとばかりに投入船の減少や抜港を推進した。(彼らからすれば船を浮かべているだけで莫大な経費が発生するので当然の判断ではある)

一方でコロナ禍にあっても非常に好調業界があった。ECである

まず、比較的早期に経済再開を推進した中国米国の間で需要が急増した。

元々米国中国にとって最大の取引である

従来から供給していた生産原料やら部品やらに、ステイホームからリモートワークで様々な物品をECで購入する米国民個々人の需要が加わった。

気がつけば中国ではコンテナへの需要供給を大幅に上回る状況が生まれていた。

会社は空のコンテナを積地に輸送しなければ輸送ニーズに応えることができない。

そして高くても積む荷主が多い地域に空のコンテナを持っていけば、船会社にとっては収益に繋がる。

未だコロナから脱していない他のあらゆる国から中国に向けて空のコンテナ輸送される流れの完成だ。

今、中国北米向けの海上運賃コンテナ1本あたり2万ドルを超えている。

日本企業は完全に面食らっている。彼らからすれば物流コストなどというものは値下げ交渉の末に妥結するものしかなかった。

どんなに高値を積んでもサービスを利用する強い需要を保ち、しかも実際にそれを支払う購買力のある国が、あろうことか自国の真隣で終わりのない市況高騰を助長し始めるなど夢にも思わなかっただろう。

これが、日本が巻き込まれている買い負けの海上運賃相場であり、今多くの企業が苦しんでいる物流コストの増加である

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