■妊娠した話
生理が一週間遅れることは頻繁にあったので、特に気にしていなかったのだが、今回ばかりはとても不安だった。
もし妊娠してたら?どうしよう、いつのかな?あーあ、馬鹿だなあ、貯金もないしな、一人暮らしだし、あの企業から内定貰ったけど産むとしたらどうなるんだろう、来年から働けるのかな、まず大学卒業できないかな、堕すのも産むのも怖い、彼は私と結婚したいと言ってくれているけど、するとしても当分先のことだろうし、彼も今年から働き始めたばかりだし、産んだら今やってきた全てのことが無しになるんだ、
あー、無理なんだろうな
って色々調べながら考えた。
その日に彼に会って、妊娠してるかもしれない、明日検査薬で調べてみる、と伝えた
彼の第一声は「今は、無理だよね」だった。
分かってたし私もそう思ってたけど泣いてしまった。
ご飯も食べず一晩中泣いた。
昨日の朝、起きたら目がパンパンに腫れて半分しか開かなかった。蒸しタオルで目を温めたり水で冷やしたりしながら、こんな状況でも自分の目の醜さに構っていられることに驚いた。
検査すると決めてから30分くらいうだうだと悩んで、やってくると言ってからまた30分くらいぐずった。いざ検査してからも結果を見るのが怖くて検査薬の窓のところを握りしめて離せなかった。こんな覚悟もできない人間が母親になれる訳ないよなあって思った。
彼が、じゃあ、結果を見るとき、どんな結果でも二人で「わーっ」て言おう、と言った。
覚悟を決めて、見た。
検査薬の窓にはしっかりと赤い線があった。
私は「わーっ」とは言えなかった。
今日の朝、私はお米を炊きしっかりと朝ごはんを食べた。天気がとても良く、洗濯をして、布団を干した。少し暑かったので扇風機を回した。昨日よりもなぜかさっぱりした気持ちだった。
壁はピンク色で、オルゴールのメロディーが流れていた。私の番号が呼ばれて、診察室に入るとすぐにエコー検査になった。はじめて検診台に座った。びっくりしたが意外と抵抗は無かった。
豆粒みたいに小さかったけど、確かにそこにいた。
ああ、私の子なんだ、この子が、そうか。ちっちゃいなあ。可愛い。
先生は、いま大体5週目くらい、赤ちゃんは9mm、場所も問題ないです、順調に育っていますね、と言った。そして、まだ時間はあります、まず2週間しっかりと彼と相談してみて、また検診に来てくださいと言ってエコー写真をくれた。
帰り道、私は9mmってこのくらいかな、と指で大体の大きさを作ってみた。
本当に小さかった。こんなに小さいんだ。
でもしっかり生きている。私の中で。
すると涙が溢れてきた。
私は9mmの隙間を見つめながら、歩いて家に帰った。
人殺しポエマー
■妊娠した話 一昨日、不正出血があった。 何かと思って調べてみたら、妊娠の可能性があるとのこと。 生理が一週間遅れることは頻繁にあったので、特に気にしていなかったの...