その高校は県の中で最下位の、いわゆる底辺校だった。底辺校というとDQNの集まりだと思うかもしれないけど、DQNは全くいなかった。そのかわりもっと酷いものがいた。ADHDやアスペルガーのような発達障害、知的障害を抱えた人たち。社会から根絶され、他のどの高校にも行けない人たちが集まっていた。
その中は正しく闇だった。授業中にじっとしていられない人、まともに会話できない人、常にどこを見ているか分からない人、少しでも気に入らないことがあると暴れる人、黒板にうんこの絵を描いて喜ぶ人。不登校者も多かった。ゲームとラノベとアニメの話しか飛び交わず、誰も世間については無関心だった。テストの平均点が一桁なんてザラで、進路のことなんか誰も考えていなかった。やる気のある先生もいなかった。部活の大会等で制服を着て外に出ると、周りから後ろ指をさされた。
僕は頭がおかしくなる前に何とかそこから抜け出した。そのおかげで今では幸せで「当たり前」な生活を手に入れている。
でも彼らはどうだろうか。高校を卒業した後、どこへ行ったのだろうか。多分、何も変わってないのだろう。また社会から拒絶されて、居場所を探すか、自分たちの世界に籠もっているのだろう。
時代が経って発達障害や知的障害に病名が付き、それを持つ人々への理解が深まったとしても、彼らが「話の通じない人」や「変な人」であることは変わらない。いくら綺麗事を教えられたって、いざ彼らと面すると「嫌だな」「面倒くさいな」という気持ちが生じることを否定できない。彼らと一緒に働きたいかと言われて首を縦に振る人は少ないだろう。事実、僕だって意図的に彼らを避けてしまう。