2011-06-29

中国海外新幹線技術特許乱発」ってこれ審査請求しただけでは

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110628-OYT1T00623.htm

読売新聞に、中国新幹線特許をあちこちの国で出してるってニュースがでてて、それに対して「中国けしからん」「JRは何をやってるんだ」って憤ってる人をちらほら見かけます。でも、この出来事が日本国益を大きく損ねるかというと、そんなこともないと思うんですよねー。

ここから例え話をします。

前提
あなたは、「シャーペン」がA社によって既に発明され、特許化もされているが、「消しゴムつきシャーペン」は発明されていないし特許化もされていない、パラレルワールド日本に住んでいます
Q
あなたは「消しゴムつきシャーペン」を発明して特許申請しました。さてこの申請は認められるでしょうか。認められたとして、A社に対して権利行使をすることができるでしょうか。
A
特許申請は認められ得ますしかし、A社によるシャーペンの製造・販売を邪魔することは一切できません。シャーペンの製造・販売に関して金を巻き上げることも一切できません。

なぜそんなことになるのか。それはあなたの「消しゴムつきシャーペン特許」の権利は、「シャーペン消しゴムをつけたら便利になる」という発明にのみ関するものからあなた発明のうち、「シャーペン」に係る部分は、あくまで先の特許申請していたA社のものなのです

では、あなたは「消しゴムつきシャーペン特許」を使って何ができるのでしょうか。

消しゴムつきシャーペンを作って売って大儲け

できません。あなたは、消しゴムつきシャーペンを作って売った時点でA社の「シャーペン特許」を侵害していますので、権利侵害で訴えられます

A社と「シャーペン特許」のライセンス契約を結んで、消しゴムつきシャーペンを作って売って大儲け

できます。ただ、儲けた分の何割かはライセンス料としてA社に渡さないといけなくなりますので大儲けにはならないかもしれません(契約内容にもよりますが)。

A社に「消しゴムつきシャーペン特許」を売り込んでライセンス契約結んで大儲け

できます消しゴムつきシャーペンがすごい発明であるとA社に認められれば。

A社があなたに無断で消しゴムつきシャーペンを新発売したので権利侵害で訴えちゃう

できます。あくまで、消しゴムつきシャーペンに関してのみですが。

日本特許って、ざっくりこんな感じです。パクりはダメです、でもどこかしらにオリジナルの部分があれば、そこは認めます、という。

ではここで、件の記事に戻ります

中国が高速鉄道に関する技術特許申請を日本欧州など5か国・地域で進めていることが28日、明らかになった。

申請だけなら、お金を出せばいくらでもできます。それが特許として認められるかどうかは別の話。

中国特許申請の手続きをしているのは、日本米国ブラジルロシア欧州車両台車や先端部分など計21件の手続きを進めており、このうち8件は予備段階の審査をすでに通過したという。

これだけだとよくわかんないんですが、この「予備審査」って、国際予備審査機関による国際予備審査報告のことなんじゃないでしょうか。この国際予備審査報告は、「キミのその発明が、国際的に見て特許するに値するかどうか、各国に実際に申請する前にある程度教えてあげるよ」って類のもので、実際に各国で特許されるかどうかはあんまり関係なかったように思います((Wikipediaの記事))。

中国政府は「(日本などから技術を)取り入れ、消化吸収し、革新させた」(鉄道省)として、高速鉄道に関する技術は完全に独自開発と主張している。

実際に中国がどんな発明を出願したかはわかりません。考えられるのは以下のパターンでしょうか。

  1. 完全にオリジナルなすっごい技術自分発明して申請
  2. 全然パクリだけど申請
  3. 上記の例え話で言う「消しゴムつきシャーペン」みたいな改良発明を申請
    • 上の例え話みたいな展開になると思います

自分は、今回の件は上記の中で、2と3に該当するんじゃないかなーと思っています

2だったら、どうせ却下されるんで、国益は害されないでしょう。

3だったら、ひょっとしたら、今後中国にどっかでお株を奪われる可能性はあります。でも「消しゴムつきシャーペンだって、れっきとした発明です

海外技術を持ち込んで中国新幹線を作るとしても、多分、中国なりの苦労があると思うんですよね。国土とか電力事情とか、中国固有の障害が。で、それを乗り越えるためには、それなりの改良があったはずなんです。それは、れっきとした発明ですし、オリジナルものであるならば世界中特許される資格があります。それは中国努力の勝利と言えるんではないでしょうか。

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さてここから補足。

上記の話は、あくまで「日本の話」です。国が違えば、事情も違うと思います中国特許制度がどうなってるのかはぜんぜん知りませんが、ひょっとしたら、海外メーカー権利を認めず、今回の特許がまかりとおってしまうかもしれません。わかりませんが。

あと、ひょっとしたら海外に申請した特許が「共同開発なのに中国のみを発明者として申請した」のかもしれません。それだと色々と悶着があるかもしれません。わかりませんが。

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