文部科学省は、国費を財源とする無利子奨学金の貸与を大学生らが受ける際の条件について、成績や世帯収入に加え新たに「社会貢献活動への参加」を追加する方針を固めた。
税金が入った無利子奨学金を受ける際の基準に社会貢献活動が追加されるというニュースだ。ツッコミどころがありすぎて何から始めたらいいか分からない程のダメさ加減だが三点ほど。
まずは、何度も指摘しているが、「奨学金」という言葉遣いだ。無利子奨学金というのはあくまで貸与であって、政府の補助は「無利子」の部分でしかない。はっきり教育ローンと呼ぶべきだ。
次に、この政策はその目的を果たすと思えない。
同省は、公費で学ぶ学生に社会還元の意識を根付かせたいとしている。
どうも希望と現実が混同されているようだ。社会貢献活動を義務付けると社会還元の意識が芽生えるというメカニズムを教えて欲しい。税金を払わせると寄付の心が芽生えるだろうか。
また、目的を達成するかどうか以前にその目的の設定に問題がある。奨学金や教育ローンの政策目的は社会的に望ましい(教育)投資に対して、補助金や流動性を提供することだ。決して「社会還元の意識を根付かせる」ことではない。条件・義務を増やすことはこの本来の目的に反するし、二つの目的があるとそれが達成されているかを測定するのも難しくなる。
ちなみにこのように一つの政策で複数の目的を達成しようという試みは、しばしばやりたいことがあるにも関わらず他人を説得できる策が思いつかないときに行われる。この場合であれば、「社会貢献活動を増やす」という目的があるのに、それを達成する有効な策がないために教育ローンという入れ物を利用している(どっかの外郭団体が無料ボランティアをほしがっているのだろうか?)。
社会貢献活動がそんなに重要なら、兵役のように全国民に義務付けてしまうこともできる(みんなが社会還元意識をもったほうがいいだろう)。それをしないのはそれだと支持を得られないからで、かわりに立場の弱い教育ローン受給者だけに絞ったのだろう。
最期に一文だけ繰り返し引用する。
成績や世帯収入に加え新たに「社会貢献活動への参加」を追加する方針を固めた
貧しい家庭の出身で一定の成績を修めている人にたった今から(!)社会貢献をしろと言っているようにしか読めない。よくもまあそんなことが言えると思う。
引用元を明記しましょう