増田は卑怯なメメント・モリというタイトルの童話を知っているかな。
昔々、ある小さな村にピエールという青年が住んでいました。彼は何よりも死を恐れる臆病者でした。村では、「メメント・モリ」という言葉がよく語られ、生を大切にする教えとして親しまれていました。しかし、ピエールはこの教えを単に恐ろしいものとして捉え、どんなことをしても死を避けたいと考えました。
ピエールは、自らの恐怖心を克服するため、村の賢者を訪ねました。賢者は彼に、「本当の勇気とは死を受け入れることにある」と言いましたが、ピエールはその言葉に耳を貸しませんでした。代わりに、彼はある謎めいた魔女のもとへ出かけ、死を避ける魔法を求めました。
魔女は、ピエールに不死の薬を授けることを承諾しましたが、その代わりに彼にこう告げました。「卑怯な行いには代償がある。この薬を飲むと、あなたは誰にも愛されなくなるでしょう」と。しかし、ピエールは恐怖に駆られ、魔女の警告にもかかわらず薬を飲んでしまいました。
不死となったピエールは、確かに死の恐怖から解放されましたが、徐々に人々の記憶から存在を消し去られるようになりました。彼は友も家族も失い、やがて誰にも見られず、知られることのない存在になってしまいました。孤独に苛まれる中、彼は初めて「本当の意味での死」を理解するようになったのです。
最後にピエールは、再び賢者を訪れ、全てを告白しました。賢者は静かに微笑み、「人は卑怯な手段によって、本当の生を得ることはできないのだよ」と告げました。ピエールはその日から、自らの命をかけがえのないものとして、他者と分かち合うことを決意しました。