増田は愚直で、情報に強いわけでもなく、ただそのジャンルのことが好きだった
競争相手はたくさんいた
他の参加者たちがF1カーでスピードを出してびゅんびゅん進んでいく中、増田は旧ホンダシティに乗りのろのろとコースを走っていた
F1カーの彼らは知人から、ネットから情報を受けとり、もっとも効率の良い方法、もっとも勝率の良い方法を学び、すぐに実践し、彼らはますますスピードを上げていった
レースは途方もなく長い
やがて多くのF1レーサーは疲れてしまい、全速力で走るのをやめた
やがてセオリーの必勝法は通じなくなり、嫌気が差したレーサーたちが引退した
忙しい
他にやることができた
やって何の意味があるの
増田は旧ホンダシティのまま、速度を緩めず、早めることもなく走り続けた
今や多くのF1レーサーが脱落していた
それでも増田はそのことを知らず、速度を緩めず、早めることもなく、ただ今も走り続けていた
誰も見向きもしないジャンルでも、最後までしがみついていれば「完走した」つもりにはなれるよね。