「『音楽は不要不急』。そんな言葉が出てきたとき、僕はほっとしたんです」。ドレスコーズの志磨遼平はそう語る。「不要不急」という言説に、怒りを表明するミュージシャンやファンが多い中、「不要不急」という言葉に志磨はなぜ安心感を抱いたのだろうか。
「衣食住に関わるようなことを、自分は仕事として選択しなかったんですよ。結構自分は、みんなに必要のないものをわざわざ仕事に選んだんだって思うと、『それでいいんだ』と肩の荷が下りた。『皆が必要としていますよ』ってお墨付きをもらうようなことを自分はやってないから。『音楽って勝手に遊ぶ不要不急のもの』っていうスタンスが僕には合っている」
だが、音楽やライブは不要不急ではないという意見が、ミュージシャンや音楽ファンから次々と発せられた。「聴く側も届ける側も、みんなが『ライブがない生活なんて耐えられないよ』って言ってた。それを聞いて、僕はどうも違うところを走っているなっていうことがよく分かった」と語る。
「ライブやフェスで、パーティーのようにみんなで音楽を共有して、スポーツみたいに汗まみれになって盛り上がる。そういう楽しみ方はもちろん良いけど、そんなスポーツドリンクのCMのような爽やかさに、僕は乗り切れないんだと気づいた。僕にとって音楽は、もっと暗いもの」