駅のそば、高架下に近い立地だ。
越してきて初めての冬、夜になるとたまに壁から音がする事に気がついた。
ゴソゴソ、カリカリ、そういう音だ。
それからまた暫くして、天井の上、屋根裏から小さな生き物が走る足音がするようになった。
トタタタタ、カリカリ、たぶん鼠なんだろうなと思った。
とりあえず、押し入れの上段で見つけた天井裏との隙間を塞いだ。
家の外側も見て回って、素人目に見て解る隙間も塞いだ。大変面倒だ。
室内には出てきていないしと放っておいた。
蚊帳をかけて蚊取り線香を焚いて、窓を開けて寝た。隣には祖母がいる。
蛙や虫の声に消される程度の、控えめな音だ。
目を凝らしても蚊帳越しの天井がぼんやり見えるだけだし、よくわからない。
「蛇だよ」と教えられた。
幼いながらにあまり信じられなかった。なんでだろう。
ある夜。ゴソゴソ、カリカリという音が襖を挟んだ隣の部屋から聴こえてきた。
ついに入ってきたかと襖をそっと開けると、ごみ箱のあたりにちらっと長い尻尾が見えた。
調べたら、クマネズミと解った。それからは、戦いの日々が始まった。
2匹仕留めて、もう1匹を追い回した成果なのか、部屋にはやってこなくなった。
壁や天井裏の音にもすっかり慣れてきた、丁度今くらいの頃の夜。
壁からゴソゴソ、その後に天井でトタタタタ、外壁のどこからか入って天井裏をいつものように走っている。
いつもより走っている気がする。
トタタタタタタタッ
チッ チチ キィ
ギューッ
静かになった。
鳴き声、絞めたような音と、あの音が聴こえた。
びっくりした。いくらおんぼろでも、流石にこの立地で天井裏に蛇はいないだろうと思う。
でも古い家なので、いるんだろうか。
ずっと天井裏で生きてるんだろうか。
見えないので解らない。
それからはすっかり静かになったので、蛇だという事にして暮らした。
数日に一度やってくる。足音が大きい。一度鳴いたので、鳴き声で調べた。
気付き次第、居るであろう場所、その部分の天井を棒で怒突いて追い出している。
蛇はどこかに行ってしまったのか、食べられてしまったのか、そもそも蛇だったのか解らない。
たまに、隣の家の猫が追いかけて入ってきて天井裏で大喧嘩している。お陰ですっかり鼠はいなくなった。
でも大変煩いしびっくりするので、なんとかしなくてはならない。
アイツら、ガキどうしで定期的に駆け出す『運動会』しよんねんなー
うちの田舎の実家と同じだ(笑) 都内でもそういう環境があるんだな