2020-07-22

夕暮れ、コバエに好かれている

風呂上がりの夕食はおいしい。その味につられてコバエがやってくるほどだ。

皿の上をちょろちょろと動き回り、辺りを窺うようにして食べかけの飯をつんつん啄む。

もちろんご馳走するつもりなどないので手で払う。数分後、ほとぼりも冷めない内に戻ってくる。

それも中々明けない梅雨の湿気と季節柄仕方ないと、家のどこかで潜んでいるのだと割り切れれば納得できた。

しかし、そいつはなぜかところ構わずやってくる。他人がいても、外食しても、俺の皿を目掛けて飛んでくる。

しんとした雰囲気の中、自分けが変な振り付けを始めたときのあの羞恥心屈辱感は忘れられない。他の人はスルーしているのか、お邪魔されていないのかのどちらかなのだろう。

そういえば、引越しする前の家でもそうだった。ホイホイもめんつゆトラップも幾度となく仕掛けたことがあるから、お世辞にも綺麗な家とは言い難い。

だが家族で俺だけが茶碗を持って逃げ回ってきた記憶がある。ぎゃあぎゃあ喚く子供に「放置していればその内去る」と答えた親は正しかったのだろうか。

目の前で食われる米粒を見つめながら、信じて飛び立つ瞬間を待つ。

ある程度満足したのだろうか。突然視界から消えた。その隙を逃がさないと箸を伸ばす。少量の食物を犠牲にして、天敵のいない食事を手に入れた!

ふとおかずの皿を見る。

相手はカツの上に鎮座していた。

負けだった。

夏に入ってから、まだ蚊には刺されていない。夏の予定は真っ白で、今後どうなるかもわからない。

なのにコバエだけはやってくる。

今日も皿を動かしたこと無視するほど集中してトマトソースを味わっていきやがった。

なぜだ。

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