「うん。ボクが納得してるからいいんだ」
「しかし……」
「きみ、名前は」
眼の前で緊張している彼は、視線を下に落としたまま氏名を応えると、
「はっ」と私はノートに名前と所属、そして時刻を書き記す。そして「じゃ、このへんでいいかな」と促す。
「……失礼します」引き下がった。
「かれ、何回目だっけ」
「二回目かと」
「はい」所属長の名前を思い出しながら、“TEL 下げ”と追記する。
「春だねぇ」
「はい」
「今年はできないって。どうするか。地元でやるかな」
「入れておきます」
「うん」
「いかほど」
片手を上げて開いてみせるので、
「五百……」
「ちがうよぉ、四千五百ぅ」
「マルカンでね」
「はい」
「ところで、例の、そろそろチラホラと……」
「梅も咲いてるよねぇ」
「このままで、よろしいので」
「うん。彼も次期選挙で忙しいとこ、よく、よこしてくれたよね。おかげで、助かった」
「確かに」
「呼ぶ、って言ったら、あれこれ騒がれちゃって、あれぇ、やっぱりちょっとあざとかったかな、て」
「はい」
「だから、こういうのがあれば、まあ、納得してもらえるかな、って。ちょっと、いまはやめといたほうがいいかもよ、って、さ」
「はい」
「次の冬には挨拶に行かなきゃね」
私は11月のページ、既に決まっている当選祝勝会の直後に、その旨、記入する。ゴルフのコーチの手配は7月のページに。
「はい」
「午後は無しね」
「はい」
「新作のプライムが来たんだ」
* * *
午後来客なく、私邸で過ごす。