2019-12-11

文鳥の話

五月の初め、一羽の文鳥を飼った。令和のはじまりに飼い始めたから「令ちゃん」という。まあ、実際は「鳥ちゃん」もしくは「ちゅんちゃん」と呼ぶことが多い。

令ちゃんペットショップにいた頃から自分で餌を食べられる若鳥だった。店員さんは「すでに雛ではないから、懐くかどうかはわかりません」と言った。とはいえ雛鳥に一日数回、餌をやることは不可能だったし、なにより令ちゃんは抜群にかわいかったのだ。それで連れて帰ることにした。

前に飼っていた文鳥もやはり若鳥のときに迎えた子だった。その割に警戒心が薄く、野性などはすっかり忘れてしまっているようで(その子ペットショップ人間にさし餌してもらっていたのかもしれない)初日の時点で恐れずに手に乗ってきた。ただ、令ちゃんは一ヶ月が経っても二ヶ月が経っても鳥かごに手を入れただけで飛び回る。触れようものなら開口呼吸をする始末だったので、ほんとうに一生懐かないかもしれないなあ…と思っていた。思っていたんだけれど。一週間前からだろうか?急激に距離が近づいたので、びっくりしている。

これまではおたがいに不干渉スタイルを貫いていたので、放鳥時、令ちゃんが自ら近寄ってきた時点でどうしたのだろうと訝しんだ。そのうちにうつ伏せになっている私の背中や足先に止まるようになって、今日スマホ音ゲーをしている私の指にまで掴まり始めたのだ。フルコンを逃したはらいせに親指でぐいぐいとなでてみると、さすがに逃げられるという予想は見事に外れ、されるがままといった状態である。うっとりと目までつむっている。あっ、もしかして具合が悪いのかな?温度管理は万全のつもりだったけれど寒かった?いやでも、暖房小動物用のヒーターもつけているし…

今もこれを打っているスマホに止まっている。フリックする度に揺れるのに器用だと感心してしまう。彼の小さな頭の中でどのような認識の変化があったのだろう。

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