昨今の香港の情勢について、不謹慎ながら吸血鬼としてはありがたく感じていました。社会の混乱というのは我々の栄養補給のような個人的犯罪を覆い隠しますし、なによりこの血なまぐさい空気に我々の本能はくすぐられます。
しかし、まさかこんな流れ弾を受けるとは思わなかった。ご存知の通り我々吸血鬼は日光に弱く、日中の外出には帽子、サングラス、マスクが欠かせません。またマスクにはうっかり尖った犬歯を見られてしまうリスク低減の効果もあるのです。
これは困った事態です。試しにマスクなしで出歩いてみましたが、日射角と体の向きによっては日が顎を直撃し、おそらく即死するので受けたことはないのですがレーザー髭脱毛のような痛みをおぼえました。
夜に出歩けばいいと思われるかもしれませんが、吸血鬼も生きるためには金を稼がねばならず、昼間は人間に紛れてオフィスで働く日常があるのです。できるだけ日の当たらない通勤経路を考えていますが、この先の生活を思うと夜も眠れません(あまり眠らないのですが)。