自伝や伝記を読むと、自分もそのような立派な人になれるのかというと、もうひと捻りの工夫が必要である。
すべては一杯のコーヒーからの著者とは、本人が三和銀行の赤坂支店から池袋西口支店に転勤して来て退職するまで同僚として働いたが、支店での出来事、退職の経緯、タリーズコーヒー立ち上げまでの出来事、すべてが本人に都合の良い部分だけ取り上げ、いくつかは全く事実でないことも書かれている。あまりに事実と乖離しており、読んでいて気分が悪くなったので、すぐ売却してしまった。しかし、Amazonレビューを見る限り、多くの人に感動を与えているようだ。都合の悪いことは、本人の名誉もあるので私も語りはしない。当時の仲間と大勢で集まることがあっても、その人の話題が出ることもない。
これは大きな学びである。少なくとも上り詰めた人は好き勝手に持論を述べることができる。説得力もある。しかし、鵜呑みはいけない。本書で書いてあるように、その持論を実践したから権力を握ったのではなくて、権力を握ったからこそ、綺麗ごとも含めた心温まるリーダー論を語ることができるのだぐらいに思うぐらいで丁度よい。そうしないと、実社会生活においては大火傷の危険性を孕む。
私には課題があって、正しいことを入念に実行しようとしても、周囲に用意周到にひっくり返されることを何度か経験しており、物事を成し遂げるためには、汚い手を巧妙に仕掛けてくる相手の戦術を理解して、それにうまく処する必要がある。清濁併せのむつもりは毛頭ないが、濁った相手が組織の中にいれば、その人の一歩上手である必要がある。そうしなければ、結果責任を全うできない。
According to Saint Francesco