2018-01-03

ただ、オリオン座は遠くて

学生時代のお友人と居酒屋で飲んだ。

あれこれと話は弾み、会社愚痴へ。

愚痴は救いようがない、空気は暗くなる。

話題は代わり、友人は本を読んでみたいから良書を紹介いしてほしいと私に頼んだ。

私は酔いに任せて、私の人生に感銘を与えた三冊の本について説明した。あまりの熱さに息継ぎも忘れるほどだった。

ちょっとは話しすぎたかと思い、申し訳無さそうに友人の目を見ると友人は笑顔で頷いていた。

「おまえが、そうやって楽しそうに本の話をするのって、ほんと好きなんだよ」

と友人は言った。私はハッとした。仕事疲弊し、意識は埋没し、職場の恨みぶしと上司への怨念で埋め尽くされた私の心が正月の空みたいにパッと晴れた。

まだ、心も立場自由だった学生時代気持ちがフッと戻った。

そして私が本を読む理由は、ただ眼の前に広がる日常の外側を知りたかっただけなんだと思い出した。

仕事という有り触れた日常のその外を知りたい。

立場学生から社会人に変わってもこの日常という檻の外側を見つめる瞳だけは曇らせたくない。

ほろ酔い帰宅しながら、宇宙を見上げた。天高くオリオン座が輝いていた。

田舎職場で見るオリオン座は大きく明るく感じたのに、故郷の街でみるとそれはとても小さく感じられた。

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