幽冥界というようなところをちょっと見てきた(ような気がする)ので、書いておく。
あんまり知られてないけど、幽冥界というのがある。大雑把に言うと死後の世界みたいなところ。
天国とか地獄とかそういう感じじゃなくて、何もないところである。本当に何もない。モノクロの世界で背景もない。人間とかそういうものは鉛筆で書いた落書きみたいになっている。服を着ているのか裸なのかも分からない程度の落書き。あれだ、殺人事件の死体の形をチョークで書いてあるやつ、あの程度の簡略な絵になっている。
生きてないから服もいらないし、家もいらないし、地面もいらないわけ。そこで落書きみたいな人間が何か話をしたりしている。なんていうか、演劇? 抽象劇とかいうのか、舞台上に演者しかいないような演劇みたいなかんじ。
でも人は生きていないので、怒ったり悲しんだりしない。なんとなく生きていたときのことを思い出して話したりしているんだけど、感情がこもっていない。すごく悲しかったことを思い出しても、全然悲しくないの。そんなこともあったという感じ。
ああ、犬とか猫とかそんなものもいるみたいだけど、犬か猫かも判別がつかない落書きレベルだから。かわいいとかそいういう感情はなくて、ただ、ああ犬がいるなと思うだけ。