だがそのものが一つの転機を迎えたとき、彼は一転して新しいカタチのそれを憎み始めた。
毎日事あるごとにそれへの憎しみを惜しみなく言葉にして曝け出す。
新しいカタチのそれを好きな人間の前でも構わずに、そしてどんどんとそれはエスカレートしていった。
表舞台で努力を経てそこに立ち続けている実在している人物のことを、外見で貶し、失敗があれば喜び、果てにはその人たちへ事件や事故に巻き込まれて死んでしまえばいい、とまで言うようになった。
何故そこまでして憎むのだろう。
しかし私はそれに対して、できうる限り見ないように振る舞いを努めたり、金をかけて環境を整えたりしている。
そっちの方が楽だからだ。
でもそれも、他の自分の好きなものややりたいことを追いかけているうち、薄まり今となっては何故憎くなったのか小一時間考え込まないと思い出せないようになった。
だが彼はその過去のものも今も憎くてたまらないと、事あるごとに吐き出す。彼にとっては一切薄まってやしないのだ。
そして憎いものが段々と積み重なり、今の彼を形作っているように思えた。
私には彼のようになにかを憎み続ける才能がないのだろう、と今日ふと思った。