少し前の話だが、ロジャー・ムーアが亡くなったニュースを職場で知り、帰宅後に古い洋画が好きな夫にそのことを伝えようとしたのだが、映画に疎い私はそのとき「007の人が亡くなった」という程度のことしか記憶しておらず、そこから勘違いして「ショーン・コネリーが亡くなった」と言ってしまったことがあった
夫は少し怪訝な顔をして「ショーン・コネリー?本当に亡くなったの?」と尋ね直してきた
夫がこういう聞き方をしてくるときはだいたい私の勘違いであることが多いので、私は途端に不安になり「どうだろう、違ったかもしれない」と答えると、夫は「ふーん、まあ、後で調べてみるわ」と流された
そしてその日の夜、寝る前に「やっぱり亡くなったのはショーン・コネリーじゃなくてロジャー・ムーアだったよ」とスマホのニュース画面を見せて、それっきり夫はとくに何も言わなかった
他にも、私が車を運転するとき間違ったルートに進もうとしても「あれ、その交差点って直進じゃない?」などと一言言うだけで、そのまま私の進むに任せ、ようやくルートが間違ってることに私が気づいても「じゃあ、引き返そうか」と軽く促すだけだ
実家では、というか私の両親は夫とは全く違っていた
私が何か勘違いしたことを言うと即座に訂正され、もっときちんと調べてから言え、曖昧なことを言うな、昔からお前は…と、軽く一、二分はお説教が返ってきていた
車の運転のときも、カーナビの案内よりも一ブロック早く左折しようものなら大変なことになっていた
「そっちじゃない」「ウインカーあげるな」「カーナビをちゃんと見ろ」…怒鳴り声の二重奏だ