リーマンショック後に景気が悪くなり、得意先がこぞって値下げ要請をしてきた。
受注数が少なくなり、売上が大幅に下がるので、値下げでなんとか外注の負担を減らしたいということだった。
そういう時は決まって競合他社が入り込んでくるので、仕事を丸々失うよりは……ということで値下げ交渉に応じる。
それまでは値段が最安値の会社より20%くらい高くても、今までのノウハウだとかが蓄積されているのでツーカーの簡単な指示で仕事が進むので、競合が今更新しく提案をしてきたところで入り込む余地はあまりなかったのだが、リーマンショックで多少価格の安さが重要視されるようになった。
まあこうやってお金が回らなくなっていくことで経済の縮小が起るんだけど、まさにリーマンショックというのはある日を境にそういうのが一気にやってきた感じだ。
なんだかんだ値下げで昔は30万でやっていた仕事が20万になった。
どこの会社も値下げ交渉でこじれてそうな会社を狙って営業をかける。
「うちの方が安いっすよ」
そうやって案件を他社からとってきては減った分の売上をカバーする。
そうして、アベノミクスで景気が回復してきた現在、受注数が回復してきたにも関わらず値段が元に戻ることはない。
一度下がった値段は滅多な事がなければ上がらないのだ。
今まで少しながらお金を取っていたものを全部無料にしたり、ちょっと手のかかることを頼まれても仕事をもらうためと、サービスした。
いや、サービスさせられた。
下手な例えだけれど、ファイルひとつでもアップロードするのにはそこに人の手がかかっているのだから、400円でに500円でも取れるのだ。
でもこういう時代のなか、誰か一人が「それ無料でいいっすよ」とはじめてしまうと、隣の人も無料でやらなければならなくなる。そうやってどんどん労力が無料化していった。
結果、リーマンショック前の売上に回復した現在、仕事量は倍になった。
良かったのは受注量が元に戻り、不況に乗じて値段を叩けた企業だけだ。
戻してくれ。仕事量を元に戻してくれ。