ちょうど一週間ほど前、少し遅くなってしまったお昼ごはんを買いに近くのコンビニに行ったんだ。
人気のない店内をぐるりとまわり、おにぎり片手にレジ横のドリンクコーナーで飲み物を選んでいる時だった。
レジの方から「カタカナで結構ですのでフルネームでサインして下さい」と聞こえたんだ。
クレカで決済して手書きサインするなんてこともありえるのだろうと思いつつ、結局いつもの炭酸飲料を手にとってレジに向かうとちょうど前の人がレジを離れていくところだった。
そういえばお店に入ったとき、チケット端末のところで妙にコソコソと操作する見た目の割に格好のちぐはぐなおっさんと目があったのを思い出した。
そのおっさんが気になった理由は、目があったと同時にやや気まずそうに目を逸らしたからだ。
いそいそと店から出ていこうとする後ろ姿はまさにそのおっさんだった。
なんだか邪魔者扱いされたような少し嫌な気分でレジ台に商品を並べていた時だ。
片隅に置かれた少し長めのレシートのようなものが目に入った。
ご丁寧にもこちら向きに置かれたその用紙にはお世辞にも綺麗とは言えない乱雑な文字が書かれていた。
それは紛れも無く先ほどのおっさんによって書かれた本人のフルネームだ。
どうやらそのサインは何かの受け取りをするために書かれたものだったようだ。
それにしても次の客が並んでいたとしてもこれはまず片付けておくべきだろう。
このコンビニの個人情報に対する危機管理意識の低さは呆れるのを通り越して恐ろしく思えるほどだった。
だけど本当に怖いと思ったのはそこではない。
わたしは見てしまったんだ。その用紙に書かれた、おっさんが受け取ったと思われるアイドルのライブチケットの詳細を。
いい年して両親の夜の営みに出くわしてしまったようななんとも言えない気分に襲われたわたしは、家に帰ってからだんなのアイドルDVDの中身全てを腹いせにわたしの嗜好品であるガチムチビデオに替えておくことにした。許せ。