そこに写ったドレスは、ある人には白と金に見え、ある人には青と黒に見えた。
何かの錯視か、ディスプレイの違いか、それとも色覚の個人差か。
人々はこぞって口にした。
「俺は白と金に見えた」
「私は青黒だった」
「どうやったら青黒に見えるって言うんだ」
いつもどおりの、瞬間的に盛り上がるだけの、何でもないトピック…
だが次の日、すべては一変した。
「数十年かけてゆっくりと視力が失われていきます。老化による視力低下と区別しづらいので注意が必要です。ドレスが青黒に見えるのはその初期症状です」
「何が原因なのでしょうか?」
アナウンサーが尋ねる。
「この視覚異常はウイルスによって引き起こされます。感染力は非常に弱いですが、いちど感染すると自然治癒することはありません。また治療する手段も見つかっていません」