2015-02-27

青と黒の流行

2015年2月27日

一枚の写真インターネットを通じて世界中に広まった。

そこに写ったドレスは、ある人には白と金に見え、ある人には青と黒に見えた。

何かの錯視か、ディスプレイの違いか、それとも色覚の個人差か。

それは人口膾炙するに十分すぎるほど魅力的な謎だった。

人々はこぞって口にした。

「俺は白と金に見えた」

「私は青黒だった」

「どうやったら青黒に見えるって言うんだ」

いつもどおりの、瞬間的に盛り上がるだけの、何でもないトピック

だが次の日、すべては一変した。

「このドレス青色と黒色に見えるのは視覚異常が原因です」

テレビカメラの前で、博士あくまで沈着に説明した。

「数十年かけてゆっくり視力が失われていきます。老化による視力低下と区別しづらいので注意が必要です。ドレスが青黒に見えるのはその初期症状です」

「何が原因なのでしょうか?」

アナウンサーが尋ねる。

「この視覚異常はウイルスによって引き起こされます感染力は非常に弱いですが、いちど感染すると自然治癒することはありません。また治療する手段も見つかっていません」

それから博士は、数秒のあいだ迷うように口を閉じて、そして言った。

「このウイルス空気感染します」

28日後Twitter社は直近一ヶ月間のログを破棄することを宣言した。

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