私は疲弊しきっていた。長い失業と、苦しみに鈍感な家族。誰も味方になってくれない日々を、私はひたすら小説を書き、ハローワークに通い、パソコンと履歴書に向かい続けた。
冬のある日とある会社から採用通知が届いた。私はそれを喜び、家族はそれ以上に喜んだ。
だが勤め先に私は馴染むことができなかった。詳しくは語らない。ともかく他の人にできることが私にはできなかった。惨めだった。だが、現実だった。
桜の花が咲いても、我が家には寒風が吹きすさんでいた。
私は家族に罵られた。あんな条件がよかった会社を、お前はなんで辞めてしまったのだと。
少し、異常な興奮だったと思った。同時に私は、この男は私を労働力として縛り付けていたいのだということに気づいてしまった。私は彼の扶養に入ったことなど一度もなかったが、今回ばかりは願い出ざるを得なくなった。
彼は自分に突然ふりかかった家賃や一部水道光熱費の額を見て、不安になったようだった。私は彼に都合のよい労働力ではなくなったからだ。
しかし、私の前ではなんでもないふうに振る舞わねばならない。そんなわがままをやれば、私がとうとう田舎に逃げ帰る口実を与えてしまうからだ。
やがて再び私は就職した。彼は、喜ばなかった。
理由は、どうやら彼の自尊心において都合のよい就職先ではなかったからだった。
それでも、私にはようやくきた春だと感じられた。感じられただけで本当に春かどうかは、まだ不透明ではあるが、地獄の季節ではないのは確かだった。