天ぷら屋「津田殿、この度のご活躍まことに有り難く候。こちらは心ばかりの“菓子折り”で御座いまする」
時は如月、赤坂の老舗高級天ぷら屋「楽亭」には客が引きも切らない。
首相が雪害に際し、ここで天ぷらを食す前では考えられないことだ。
バブル崩壊後、交際費の減少に伴い、老舗料理店は次々と暖簾を下ろした。
営業が続く店も、格安ランチで庶民層を呼びこむなど生き残りに必死である。
そんな中、「楽亭」だけは頑なに価格と敷居の高さを維持し続けた。
しかし往年の輝きは既になく、閑古鳥が鳴くこともしばしばであった。
アベノミクスによる好景気でも、企業の経費は抑制傾向にあり、三本の矢が「楽亭」に資するところは薄弱であった。