ルックバックの1つのテーマは「なぜ創作し続けるのか」という問いであり、京本は主人公にその問いを投げかける役割を持つ。主人公が京本の高い画力に圧倒されたとき、主人公が京本を失ったとき、どちらの場面でも主人公は一度は描くことをやめようとする。しかし、どちらの場面でも最終的に主人公は「再び描くこと」を選択する。そしてその「再び描く」モチベーションは、京本への対抗心、京本と過ごした過去、と京本に起因する。京本は、主人公にとって「筆を折る理由」であり「筆を折らない理由」でもあるのだ。「なぜ創作し続けるのか」この答えの1つは「京本がいるから」と言えるかもしれない。
だが、作中に挿入されるifではこの答えは否定されている。ifの中で、主人公は京本に出会わずとも再び漫画を描き、京本は主人公と出会わずとも美大に入る。これは主人公と京本が生まれながらにクリエーターであることを示している。「なぜ創作し続けるのか」それは業としか言いようもない。
とはいえ、京本はやはり主人公にとって創作の理由である。「描けるから描いていた」小学生時代の主人公は京本に出会って、京本に勝つというモチベーションを獲得し、京本に見栄を張ってついた嘘がきっかけで章に応募する。また、京本の服のサインは大人になった主人公にとって親友の死を乗り越え連載を再開するきっかけとなっている。
京本がいなくても描いていたかもしれない。しかし、京本がいたから描いていたというのもまた事実なのだ。
主人公は京本によって挫折と再起を経験し、そのたびにより強い意志を獲得する。この過程はまさにライバル関係のあるべき姿だ、ジャンプらしいなーと思ったまる