さらに、同時に車の後ろから走ってきたバイクに急ブレーキを踏ませてしまったのだ。
バイクに乗っていた人に少し驚いた顔で「大丈夫ですか?」と言われたので、大丈夫ですと答えると、そのまま走り去って行った。
自分は彼に「すいません!」と謝ったが、もはや彼の怒りは頂点に達していた。
「ちょっと考えればわかるでしょ。なんで後ろ確認しないの?」と続けざまに怒られた。
先の一瞬の安堵は地獄の底に叩き落とされた。
恥ずかしくて憤死しそうだった。
よくよく考えなくても、自分のミスに対しての至極当然の怒りである。
あわや事故になるようなミスをしでかしたのは自分だから、怒られるのはもっともだ。
しかし、恥ずかしさはそこではない。
30近く年下の男に怒られたのだ。
すべてが、この怒声で改めて思い知らされた。
そんな彼の怒っている顔を見て、申し訳ないという気持ちは生まれなかった。
ただただ自分が情けなくて情けなくて仕方がないという気持ちと、先輩に対するタメ口が許さないという気持ち、そして、なにより普段クールに演じている自分が、こんなことで怒られるのをローラに見られたことがつらかった。
しかし、彼は人生の先輩に対してあるまじき怒声で怒鳴ったのであり、これは許されることではない。
そこはローラも自分に対して気の毒に思い、心配してくれるはずだと思い込んだ。
優しい心の持ち主の彼女なら、自分の些細なミスよりエグザイルの無礼な態度のほうが許せないと思うはずだし、自分に肩を持ってくれるはずだと信じた。
彼女はきっと、心配そうな顔で自分を見ているに違いないと、そう信じて、彼女の顔をちらっと見た。
この期待はあっさり崩れ去った。
彼女の顔はまったくの「無表情」だった。
おそらく、いや、間違いなく「怒り」を表しているのだろう。
彼女も自分のどんくささと勘違いに怒っていたということに、やっと気が付いた。
そして、うなだれながら自宅に帰った。
そもそも彼は自分に対して敬意があったからいじらなかったのではなかったのだ。
だから、いじるほど関心すらなかったのだ。
無関心だったのだ。
そしてそれはローラも同じだった。
あそこの塾にいる人間みながそうなのかもしれない。
自分など、いてもいなくてもどっちでもいいのだ。
むしろいないほうがよいのだろう。
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クールに気取っても、何の関心も抱かれなかったのだ。
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