その前は2chに居たニュー速民で、vipperだった。子どもの頃からインターネットが遊び場だった。
インターネットには、いつでも行けば何かがあった。誰かが居た。
眩しい人に群がることができた。何者かと一緒にいれば何者かになれる気がしてた。楽しかった。
爆弾魔さんが、特に好きだった。やることなすことのスケールが大きくて、ギャグも毎回冴え渡ってて、本当に面白かった。
だけどある日、マインクラフトの仕様が変わった。爆弾が弱体化された。彼は動画を投稿しなくなった。
生放送はずっと続けていたけど、DMMゲーとか、艦これとかFGOとかそういうソシャゲを実況するようになった。正直、興味がなかった。
マインクラフトの動画が見たかった。楽しい爆弾魔さんが見たかった。
それでも視聴者がたくさんいたから、いろいろな話題が出たから、生放送に行った。
でも、ニコ動が衰退していくにつれて、みんな居なくなってしまった。
あの日、米津玄師が「砂の惑星」を発表した時、故郷に後足で砂をかけるなんて、と思った。
錆びたバースデーケーキの周りをぐるぐる回る不貞腐れたミクとそれについていく連中。
しかしあれはまぎれもない予言で警告だったのだと、あの頃はまだ若すぎてわからなかった。
やがて爆弾魔さんも私達も成長した。米津玄師の予言どおりになった。気づいたら、私もつまらない大人になってた。
爆弾魔さんは、FGOをやりながら不平不満を放送で、今日もぶちまけてる。
いじめには、いじめられる方にも問題があるとか、いじめられてウジウジしていても結局何も変わらないんだから結局自分が壁を超えていくしか無いんだとか、
たすけてほしいならわかるけど、たすけろはムカツクとか、フェミニストや女の思考回路がうざったいとか。
そういうことを放送で語っていた。たぶん、きっといい歳した大人なら誰でも考えることだ。そしてそういうもんだ、仕方ないって飲み込むこと。
なのにそうですねとか、長文で返答をする視聴者も居る。
まぎれもない、砂の惑星なわけで。
限界だった。彼の放送を閉じた。歳をとってしまった爆弾魔さんも、何者にもなれなかったつまらないただの視聴者の自分も、もう嫌になっちゃった。
淡々と部屋掃除して、皿洗って炊飯器セットして、夕飯の支度した。風呂入ってご飯を食べた。そのうち歯を磨いて、寝て起きて、職場に行って仕事する。
何者にもなれなかった。何も作り出せなかった。
ニコ動自体は悪ではなく広場に過ぎないし、いつまでも個人に執着するのがおかしい。