2019-05-05

愚者は自ら堕ちていく

とある土曜の夜10時ごろ。

私は松屋で夕食を終え、晩酌を一杯だけ行こうと思い、同じビルの階下にある魚民にひとり入った。

通された席の通路を挟んで隣の席。男ばかり4ー5人のグループが何やら騒がしい。若い男がひとり、隣席でもうるさいレベルの音量でまくし立てている。

スズキさんはね、全然ダメよ。ゴミ。ぜんぶゴミたよ。」

その言葉中国訛りのカタコト、かつ酔っ払って呂律が回っておらず、余計に耳についた。どうやらグループ内で揉め事が始まっていたらしい。私はひとり酒ゆっくりと飲む楽しみがぶち壊しになったことを悟り、悲しい気持ちになる。

ガシャン!グラスでテーブルを叩く音がした。

ケンカしますか?オレと」

中国人はヒートアップの一方だ。しかし、ケンカを売られたスズキと思われる男はボソボソと何か答えるほどで、言い争いにまではならない。

ダメあんゴミだよ。ゴミ!」

貧しいボキャブラリーのまま、中国人のトーンが収まっていない。彼はかなり興奮している。スズキスズキで何か言い返してはいるようだ。それは大声で正面から威圧する中国スタイルとは反対に、ボソボソと相手の嫌がることを突いていく陰湿スタイルだった。

「そんなことないよ!女ならいっぱいいるよ!オレは…」

「…へぇ…じゃ紹介して。合コンしよ」

地獄のような応酬だった。スズキ中国人がモテないことを陰にディスったのだろう。今夜一番の声量で中国人は反射的に言い返した。が、語尾に行くほど小さい声になっていたので発言内容はほぼウソだろう。それに対し、スズキカウンターは表面上、まるでよくある雑談の途中で社交辞令を言ったかのように、余裕しゃくしゃくだと見せようとしていたが、声が震えており、ケンカ慣れしていない感が溢れ出ていた。おそらくスズキモテない。

安いチェーン居酒屋

土曜の夜にパッとしない男同士で

どちらがモテるかマウントあい

バレバレの嘘をつき

余裕見せようとして失敗している

地獄だ。目糞と鼻糞が組んず解れつしている。救いがない。

愚かな男たちが金と、時間と、精神をすり減らし、ささやかな友人関係まで失っていく様を見てしまった。

私は注文したハイボール3分の2ほど飲んだところで店を後にした。魚民の扉の外でふと店を振り返えり、立ち止まった。ハイボール残り3分の1を飲む時間に代えて、今自分に何ができるかを考える。しかし彼らの幸せを願う事はない。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん