2019-01-20

[] #68-5「ブラックホワイト

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母たちの仕事は、社内にある機械管理だった。

「このモニターから、それぞれの機械状態が分かるんで。何かあったら知らせてください」

「そんなことをパートの、しか新人私たちに任せても大丈夫なんですか?」

「いやいや、むしろ簡単から新人やらせたい」

ダマスカス説明によると、そもそも各々の担当者が見張っているし、異常が滅多に発生しないため簡単なのだという。

まり問題が起きた時、それを取りこぼしにくくするための、あくまで念のための仕事というわけだ。

管理を何重にもやるなんて、随分と念入りなんですね」

「我が社は精度の高さがウリってなもんで。もしも客から文句でても、ウチらは悪くないってことの証明になるでしょ?」

中々に不適な物言いだが、それだけ自社の作るものに自負があるってことなのだろう。


…………

実際やってみると、ダマスカスの言うとおり簡単仕事だった。

モニター機械状態は一目瞭然であり、もしも異常があった場合は近くにあるボタンを押すだけでいい。

「マスダさん、1時間経ったので交代しましょう」

センセイとの二人体制なので、休憩も頻繁に入れることができた。

「あ、マスダさんも休憩ですか」

「ええ、といっても休むほど疲れてもいないんですけどね」

「ははは、ここって暇ですもんねえ」

「私はサイボーグなんで、余計に力を持て余すんですよね」

「ええ!? マスダさんってサイボーグなんですか、全然気づかなかった……」

「二人目を生んでからは生身の部分もきつくなってきて。今ではほぼロボットですよ」

「ひょえー……ということは不老不死ですかい

「いえいえ、寿命はありますよ。脳と心臓人間のままなので、そこは老化していくんです」

「ああ、そこら辺はサイボーグって感じなんですねえ。全部機械にしたりしないんですか?」

「そこまでやっちゃうと、もうロボットって感じがして。それを夫に話したら、『二足歩行からロボットじゃなくて、アンドロイドだろ』って真っ先にツッコむんですよ」

「ああー、いるいる。話の本筋より、そういうところ訂正したがる人いるよねー!」

「ははは」

仕事面白みがなかったが、それでも同僚と良く会話ができたので退屈はしなかったらしい。

当時、母が仕事での出来事を嬉々として話していたのをよく覚えている。

充実していた、ってことなのだろう。

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