2017-10-04

月がきれいですね」「死んでもいいわ」は大嫌い

こんなに月がきれいな晩にいうのも何だが、

いわゆる「月がきれいですね」のくだりオマージュが大嫌いだ。

何か物語があり、何かのカップリングがあると、すぐどいつもこいつも、

男「月がきれいですね」 女「死んでもいいわ」 ラブラブEND みたいな掌編マンガドラマを書き始めるが、

あれはなんだ。



嫌いな理由

月がきれいですね」は漱石(が言ったことになってる)の気の利いたジョークであり、

その意味を汲めないやつが消費的に使っていること。

I Love Youをまんま和訳すると、当時の日本人には直接過ぎる。

から月がきれいですね」という当たり障りのない事を「そうですね」とやり取りすることで、

2人の気持ちは通じ合っていることを確認するから愛の告白なのだ

だぁから、間違っても返す言葉は「死んでもいいわ」じゃない。

「そうですね」とか「私もそう思います」だ。それで2人は見つめ合うーーーなら良い。いいじゃないか

それ以上言葉はいらない、心はもう通じ合ってるじゃない!

なのにさあ…なんなん…


嫌いな理由

月がきれいですね」と「死んでもいいわ」はまったくニュアンスが違うし、情の質も異なる。

なのにそれを無視して、無視して、ただ近代文豪が言ったという権威に乗っかってキメラにして、

それでいてなお、ちょっと自分作品文学・詩的にしようとしてる姑息さが嫌いだ!

「死んでもいいわ」は二葉亭四迷ツルゲーネフの「片恋」を訳す際に用いた言葉だが、

はい、もうこの時点で何人かは、「エッこれ漱石言葉じゃないの!?」とか言ってるからな、ここで!)

ヒロインのアーシャが主人公に抱きしめられて返した言葉だ。唇が主人公の胸元に触れるか触れまいか

ところで、アーシャがぽろりと漏らした言葉がこれだ。

アーシャは主人公に、片思いしてるわけ。そんな主人公に熱い抱擁をされて、

彼女はきっと、熱に浮かされたように頭に血が上り、緊張し、そして幸福絶頂を味わったんだよ。

だ・か・ら・こ・そ、「死んでもいいわ…」なんて言うわけ。もう今の幸福を例えるなら、

死んでも惜しくないほど幸福だと。

分かる? 「死んでもいいわ」はなんなら、I Love Youあなたを愛しています なんて生易しい沸点言葉じゃないの。

暴走ギリギリ感情表現しているわけ。

これで「月がきれいですね」と「死んでもいいわ」の言葉の取り合わせがいいわけないよね?でしょ?

ほら。

ね、みんな嫌いになったでしょ?

なんか安っぺえええ、浅い知識いかにもこざっぱりした和風純情を出そうとしてるせこい演出だと思わない?



はあ、言いたいこと書いた。気持ちよかった。ではまたこんど。

  • 分かりすぎる

  • 寡聞にして しんでもいいわっていう返しをする風潮があるってのを知らなかった アイラブユーを月がきれいですねって漱石が訳したくらいは知ってたけど 付きがきれいですね→しんで...

    • 読んでくれてありがとう。 実例を、とのことで、何か著名なものを、と思ったのだけど申し訳ない、、 たぶん著名な作品で例はないや。 これを書いてる時に頭のなかで想定していた...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん