突然で申し訳ないが僕はコーラが好きだ。浴びるほど飲みたいというほどではないけどジャンキーに片足突っ込んだ兄ちゃんが日常のつぶやきとしてあーヤクでもキメてえなと思うくらいの頻度で好きだ。
コーラを飲む上で避けられない問題がある。それはコカコーラにするかペプシコーラにするかということだ。これは単なる味の好みの問題ではなく大げさに言えば人生におけるスタンスの問題になる。
コカコーラを選ぶあなたは安定志向でバランス感覚に優れた凡人である。ペプシコーラを好きなあなたはチャレンジ精神に富んでいて固定観念を打破する中二病患者であるといえる。まぁ嘘だけど。
僕はどちらかと言えばペプシコーラの方が好きだがコカコーラ・ゼロはなかなか優れた一品だと思っている。爽快感と軽さがいい。
コカコーラ・ゼロが出た当初、僕は高校3年生で青春の日々を鬱屈した思いで過ごしていた。受験への不安と女子と付き合ったことがないというコンプレックスはつねに皮膚にまとわりついていて僕はそのぬめりを振り払うためにコーラを飲んでいた。
9月に入ってクソみたいな文化祭の打ち上げの後、駒沢公園の広場で僕はクラスメートの男どもがはしゃいでいるのをコカコーラ・ゼロを飲みながら眺めていた。
「おつかれ」と言われて初めて横にそいつが立ってるのに気づいた。手にコカコーラ・ゼロを持っていた。
「おう、おつかれ」と返したら横に座られて内心ものすごい焦った。そんな仲良かったっけ?そう思いつつ今日はキャミなのか、しかも黒かエロいなと思う自分もいた。
「何の係だっけ」急に聞かれてむせそうになった。
しらねえよ。なんて答えていいかわからなかったから黙ることにした。
気まずい数十秒。
「何で泣いてんの?」
「いや、こういう、みんなでってのも最後かって思ったら、何か悲しくて」
「でも、この瞬間って最後じゃん」
「まぁそうだけどさ」
「もっとみんなと仲良くすればよかった。あたし世界狭かったかも」
「え、オレより全然仲いい奴多くない?」
「いや、もっとジャンルが違ったヒトと交流すればよかった。すごい面白いコとかいてさ。あたし気づけなかったわ」
「でも仲良くなった子とかもいるんでしょ?ならいいんじゃね」
「そうだなぁ」
「そうだねー。ね、今度2人で遊ばん?」
「え?」
「なんでもない」
あの時、あいつが両手で持ってたコカコーラ・ゼロの缶は、未だに覚えている。
と、まるで作り話みたいなんだが、本当に作り話なんだ。すまない。
そろそろ桜台とかにしとけよ