2023-06-02

まれながらのブクマカだった

おれは幼少期からひねくれた子供であった。疑り深い性格で、何かにつけて疑問を投げかけた。他人から「これはこうなんですよ」と言われると、決まって「ほんまか?」と反発した。素直とか純粋とは真逆の、反骨精神の強い子供であった。

教師クラスメイトから何か言われるたび、おれは繰り返し叫んだ。

「ほんまか?」

そうして順調に友人を失っていったおれは、大学に上がる頃にはとうとう本物の一人ぼっちになった。噛みついてばかりの面倒くさい奴だと周囲に見限られたのだ。

そんなある日、インターネットの広大な海を放浪していて、「はてなブックマーク」というサイトにたどり着いた。トップページには記事の一覧が表示されている。なるほどスマートニュースみたいなもんか、と思った。

はてなブックマークにはブックマークコメントというものがあった。140文字以内でコメントを書くことが出来るらしい。

これが大きな転換点だった。

おれははてなブックマークにのめり込んだ。コメントを書いていると、おれはおれであることを許されたような気がした。ここなら自分らしくあってもいいんだ、と思った。どれだけ批判しても、邪推しても、ひねくれたコメントを書いても、それはただのコメントの一つとして溶け込んでいたし、時にはスターで輝いてさえいた。おれは夢中でコメントを書いた。

ブックマークコメントというものに魅了された。それがおれの人生だった。

ところではてなブックマークのコアなユーザーは「ブクマカ」と呼ばれるらしい。その名の響きにおれは妙な親近感を覚えた。「ブクマカ」という名前には母の優しさを思い起こさせるような温もりがあった。

気付けばおれもブクマカになっていた。

ブクマカ――――。

もしも誰かがおれに向かって

「お前の書いたことはすべて間違ってる。この嘘吐きめ。お前は一体何者なんだ」

と罵ってきたら、

おれは爽快に髪をかき上げてニヤリと笑い、こう答えるだろう。

――――ほんまか? (I’m a book marker of Hatena. )

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