完全に長女に生まれた私の偏見で世間の狸顔の女に対する僻みなんだけど、長女は絶対に狸顔の女には勝てない。
狸顔の女はその顔だけで守ってあげたいような気にさせてくるし、実際甘えるのが上手い。
一方私のような典型的な長女は、世間で言われる長女の性質が本当にぴったり当てはまるから放っておいてもなんとなく大丈夫だと思われるし、実際放っておかれて育つから甘えるという選択肢が基本的に一番後ろの方になる。
狸顔の女は、一見誰かに頼らないと何にもできないような顔をして実際めちゃくちゃ仕事ができたりする。「○○ちゃんすごいね〜!」と褒めてもらえるのだ。
長女は育つ過程でいつの間にやら長女っぽい顔と性格に育つから、真面目そうにみえるというだけでそこまで能力が高くないのに失敗をすると「あれ?」みたいな顔をされる。難しい仕事を頑張ってこなしてもなんとなく大人びた顔をしているせいで「おつかれ〜!」とできて当然のような扱いをされるのだ。失敗をしないために必死で努力して掴んだ結果は、元々能力の高い狸顔の女にひょいと簡単に超えられてしまう。
私みたいな絵に描いたような長女は狸顔の女が自分の少し上を歩いていることが本当に気に食わない。
お姉ちゃんだからできるでしょ、お姉ちゃんがいるから大丈夫、お姉ちゃんだからお手本になって、お姉ちゃんがついててあげて、お姉ちゃんに頼んで、あんたはお姉ちゃんでしょ
いつも私の後ろをついてくるのは狸顔の女だった。私の方がお姉ちゃんなのに、私が妹の面倒を見てきたのに。
いつの間にか妹の方が先を歩いていて、お姉ちゃんってそういうとこあるよねと笑っている。
狸顔の女は私にできないことができるし、当然のように私にできることもできる。でも、私は狸顔の女にできることができない。それだけなのだ。
なのに家を出るまでの約20年間の長女としての凝り固まったプライドが、狸顔の女が自分の先を歩くことを受け入れようとしないのだ。
狸顔の長女はどうなるのか