ぼくは東京を選んだんじゃない、地元から弾き出されてここに流れ着いただけなんだよ。
可愛くて頭のいい嫁、来年小学生の可愛い娘、綺麗な中古マンション、大企業で待遇もかなり良い。仕事も職場も順調だ。2人の稼ぎを合せれば将来億近く貯めることも夢じゃないし、経済的な苦労は恐らくしないし子供にもさせない。ここには院の同期や趣味の友人も多い。健康にも気を使っているし、体も生まれながら頑強だ。
運と人に恵まれた、幸せな人生なんだよ。間違いなく。絶対に手放したくないし、そのためならどんな努力でもする。
東京で幸せそうに生きる息子に両親は鼻高々さ。地元でここまで都会的な人生を歩む人間は限られてるからね。高卒のおれらから鷹が生まれた、もうその話は聞き飽きたからw
そうだよ、ぼくはうまくやってきた。これからもやっていくだろう。
でもそうじゃないんだ。
本当はこんな人生望んでなかった。
地元のコミュニティで、大変でも楽しく生きる人生がおくれるはずだった。新居を建てて両親と住み、孫の顔を毎日見せられるはずだった。
でも祭りと村社会に馴染めない人間には田舎に居場所はなかった。
悲しいかな、ぼくにはその能力が無かった。だから都会に出て生きるしかなかった。
東京に帰る時に寂しい目をするのはやめてくれないか。残りの人生貴方達と何度顔を合わせ、たわいのない話をすることができるだろうか。本当は貴方達と同じような、貴方達がぼくに期待した人生を選ぶべきだった。
親不孝でごめん。
まあ送れなかった人生を考えるのは誰にもある 人間すべてを手に入れられないから何を捨てるか選ばないといけないよ