「先輩、何読んでるんですか?」
「な、なんでそんなもの部室で読んでるんですかあ」
「いや、最近ハマってて」
「そ、そうですか」
「あのさ、最近気になることがあるんだけど」
「なんでしょう」
「同人エロ小説だと、よくヒロインが一晩に100人の相手をさせられたりするんだけど」
「かわいそう」
「一晩が仮に夜8時から翌朝8時までの12時間だとして、1時間に8人だよね」
「そうなりますね」
「長い短いの問題じゃないですよ」
「あと、100人とかいるってことは、一部屋に入りきらないし、順番もなかなか回ってこないから、時間になったらきてもらうとかなのかな」
「そんなシステム考えたこともないですけど、そうなんじゃないでしょうか」
「すると、朝の3時21分とかの順番に割り当てられたらさ、朝2時ぐらいに目覚まし時計をかけて、そこから出かけるわけ?」
「そうなりますね」
「そんで、現着して8分で追い出されるわけでしょ。割りに合わなくない?」
「ち、近くの酒場とかで飲んでるんですよ」
「エロ同人小説の悪役がそんなこと考えませんよ。近くで宴会してるんです」
「100人で?」
「いや、来るのがきついのは終電から始発の間までで、4、5時間ぐらいじゃないですか。
1時間で7〜8人だとすると、5時間だと8×5で40人ぐらいじゃないですか」
「いや、だからエロ同人小説の悪役なんですから、そんなこと気にしないんですよ」
「ともかく、40人ぐらいで近所で酒盛りしていて、時間になったらブザーか何かがなるから出かけていって・・・・で十分ぐらいしたら宴会に帰ってくる」
「帰ればいいじゃないですか、やることやったんだから」
「だって、まだ始発がきてないから、もう少し飲んでいかないと」
「うん、なんかものすごい話が盛り上がってても、呼ばれたらいかないといけないから、一回呼ばれるまでは少しシラフでいないといけない。だから帰ってきてからが宴会の本番」
「まあ、呼び出されていってはみたが、泥酔していて役に立たなかったら、悪役としても「帰れ」って感じになりますよね」
「これ、やっぱり始発がくるギリギリの人が一番辛いよね。終電できて、そこから酔い切らずに3時間ぐらい宴会に参加して」
「その人眠そうですね」
「で、十分もしないでやることやったら、戻れ!って言われて」
「とぼとぼ席に戻ると、もう始発でみんな帰ってて、新しく始発に来た新顔と飲む気にもならないし、吉野家か朝マックで食べて帰るんだろうね」
「かわいそう」
「でもまあ、100人でって言っちゃった以上、そういう役回りの人もいるわけで」
「朝の吉野家でビールを頼んで、ビールをください、ビールをください、って虚な顔で言うんでしょうね」
「狼になりたい、ただ一度」
「さっき狼になったはずなんですけどね」
「羊飼いに追いやられる羊の群れですね」
ガラガラっ
「おはよう!なんの話ししてるの?」
「狼と羊の話」