バイト日記

　学生時代、巨乳の先輩が「男はあたしじゃなくてあたしの乳に挨拶してくる」と言っていたけど、そんなに自分の胸に視線が集中していることに自分で気づけるもんなのか？　と不思議に思ったが、実際気づけるものなのである！！　と、コンビニでバイトしてはじめて知った。

　私の場合は平らかな胸（乳というよりは胸板である。）をしているので、乳に視線が集中するのではなくて、名札（の自分の顔写真）にお客様の視線が集中する。名札をじっと見る、それをお客様は無意識にやってるのかもしれないが、見られる当の本人からは、こいつめちゃめちゃ私の名札見てるな、というのがわかる。

　名札をじっと見られる理由はたぶん、私がずっとマスク着用であり、顔面の識別が目から上でしか出来ないからだと思う。そして自分でいうのもなんだが、目と眉毛だけ見るとすごく可愛く見えるのが私の顔なのだ。漫画家の矢沢あいの描いたような、ぱっちりお目目。しかし他の顔のパーツの、全てが残念。

　お客様が私の名札をじっと見るときは私の顔をじっと見た後で、一瞬目を見開いて私をじっと見るのだが、その後名札をじっと見て表情を変える。「ブスじゃん？」という落胆とか嘲りとかがありありとした白けた表情をして視線を合わせずとっとと帰る。たまに、顔と名札を交互に見られ、白けた顔をされる。

　以前、バイト仲間にブス隠しでマスクをしていると勘違いされて、「そんなに気にしなくてもいいのに」と慰められてしまった。

　コロナ以前は誰にも理解されなかったが、コロナ以後は「名札をじっと見られる」という経験を他のバイトの人もされると言う。

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