ミダス王は親友の牧神パンの笛を支持したところ、アポロンの怒りを買いロバの耳に変えられたという、有名な童話。その感想文で忘れられない主張がある。
ミダスは贔屓ではなく本心からパンを讃えたとの主張で、その判定を祟ったアポロンに対する非難の文だった。それは当時事なかれで流されていた自分にとって、あまりに新鮮な価値観だった。
他の審査員全員と意見を違えても、耳を変えられても自分の感性を貫いたミダス。私もミダスのように自分の中に自分だけの基準を持ちたいと、意識をするようになった。それは生き方を変えることで、とても勇気の要ることだった。
今、私は二次創作で拙いながら作品を発表する機会に恵まれている。
とはなかなかいかないまでも、少なくとも最も趣味の合致する作品は、私にしか産み出せないことを知っている。
同人女の漫画で気にかかるのが、他者の評価軸に依存している登場人物の多さだ。誰もが、自分の信じる作風を貫いて、例え少数派だとしても萎縮せず胸を張って欲しい。多様で猥雑な世間ほど愛おしいものだから。