夏になったけど、今年は怖い話をする相手がいないのでここに書く。
私の経験した怖い事。
幼い頃に山の中で見たクモのような謎の生き物(大きさが小学生の腰ぐらいの高さ)
特定条件が揃った時にしか聞こえない音(13〜14歳、深夜に一人きりで起きていた場合のみ特定の場所から大きな音が聞こえる)
色々経験したけど、その中で最も怖かったのが「黒い腕」だ。
その日、私は仕事帰りに映画館でレイトショーを見てご機嫌で自転車を走らせながら帰路についていた。
映画の良かったところを反芻しながら、近道だからと深夜の誰もいない住宅街を走っていると……視界の端に何かが見えた。
なんだろう?そう思ってよく見てみると、ある民家から「黒い腕」が生えていた。
真っ直ぐに伸ばされた前腕、だらんと垂れ下がった手首。ぽつぽつとある街灯の明かりの中でも認識できる真っ黒な腕。
頭で理解した瞬間、血の気が引き嫌な汗がにじんだ。
震える体を無理やり動かし、力一杯ペダルを漕いで全速力で家に帰った。
あれは何かの間違いだ。
きっと誰かの悪戯でゴム手袋でも引っかけられてたんだろう。そういうことであって欲しい。
……でも、たとえ悪戯だとしてもあんなマネキンのような細い腕を民家の壁に付けるか?
思い返せばあの道では頻繁におかしな事があった。
昼間に走る時は何も無いのに、夕方以降は前後に人がいない状態になった時だけ誰かに背中や肩を叩かれるのだ。
気のせいだと思ってた。きっと自分の髪が当たった衝撃だろうと。
でも、もしかしたらーー。
後日、どうしても気になった私は昼間に現場へと足を向けた。
「黒い腕」が生えてた民家の壁は何かを取り付けたような跡もなく、誰かが入れるような隙間もなかった。
あれ以来、私はあの道を使っていない。