数学の理論の研究過程には、多くの具体的な実例があって、ほとんどの数学者はそういう実例のイメージを頼りに理論を理解している。
IUT理論が多くの数学者に受容されないのは、その中間的な成果として、既存の数学理論を説明しないためと思われる。
よく、「他人がやらないことを研究せよ」と言われる。学者はオリジナルな成果を出すことが仕事だから、それは当然と言える。
では、ここで安易に「誰もIUT理論を研究しないから、自分が研究してみよう」と考えるべきだろうか。
IUT理論を研究するというのは、今の段階では、IUT理論の成果や論法から、既存の数学の主要な成果または未解決の成果を導くということになる。
だが、よく考えてみると、そんなことをするにはIUT理論を理解するのに加えて、やはり既存の数学を深く理解していなければいけない。
たとえば、仮にIUT理論の成果からBSD予想やTate予想などの数論幾何の超重要な結果が得られるとして、それを導くにはやはりBSD予想等の同値な言い換えや十分条件を深く理解していなければいけないだろう。そして、それは現代の数論幾何や代数幾何を専門的に研究することに等しい。
そして、そもそもIUT理論は「誰もやらない」のではなくて、「多くの人が研究しようと試みて結局諦めたもの」というのが正確である。
だから、IUT理論を用いて何かできる人というのは、別の研究を数年やれば、それなりの結果が出せるのではないだろうか。だったら、最初からそっちをやろうと思うのが普通の感覚ではないだろうか。