いつも「その話は前にも聞いたよ」と言うかどうか悩む。
私はいつも、さも初めて聞いたかのように振る舞って驚いたり笑ったりの演技をしてしまう。
でも、話してる側が既出の話であると思い出したら恥ずかしい思いをするんじゃないかとも思うし、
もしやわざと同じ話をすることでちゃんと聞いているか試してるんじゃ?と思うことすらある。
妻がよく同じ話をする。
妻は結婚式場の配膳スタッフのパートをしていて、私によく仕事の話をする。
「こんな余興があって面白かった」
普通なら見ることのできない他人の結婚式の話は面白く、いつも楽しく聞いていた。
妻はもともと忘れっぽく、昔から同じ話をすることはよくあった。
その頃、私は都度「それ前も聞いたよ」と軽く言っていたのだが、
何故今それを言うか悩んでるかというと、正確には同じ話じゃないからだ。
「新婦が持ってきた手作りテディベアを参列の子供が欲しがって泣いてしまった」
「新婦が持ってきた手作りテディベアを義母がばかにしているのを聞いてしまった」
「新婦が持ってきた手作りテディベアを義妹が汚してしまった、わざとなんじゃないか」
ディテールは一緒だから、同じ式のことを話していると思うが、その展開違いの話を色んなタイミングで3パターンくらい聞く。
どれが本当か、またはどれも本当では無いのか私にはわからないが、内容がどんどんドラマティックになっているようにも感じる。
なぜ妻は創作の話をするんだろう?
私はもはや恐怖すら感じていて、全く初めての話を聞くと「この話が今度はどうなるんだろう」と思い、集中して聞けなくなってしまった。
ちゃんと新鮮に驚いて笑えているかわからないし、とにかく怖い。もう突っ込めなくなっている。
妻が「そういえばこないだ…」というと身構える。
突っ込まないともっと悪化していくんじゃないかという不安はある、でも指摘したらどうなるのかわからない。
「その話は前にも聞いたよ」って、私はもう言えないと思う。
このまんま奥様に相談してみればよいのでは
「その話は前にも聞いたことがある」 「知っているのか、雷電!」
女は意識のないまま話してることが往々にしてあるから