中学を卒業した子にネクタイの結び方を聞かれた。お父さんに教えてもらえ、と言ったら、最近出張が多くてなかなか会えないんだ、と言う。高校の制服がネクタイ着用なのだという。
うーん。この手のことを聞かれると本当に困るんだ。何故って、私の結び方は世間の標準的なものではないから。
おそらく世間ではウインザーノットが標準なのだろうと思う。勿論私もウインザーノットで結べるけれど、左右対称で横に広がったあのノットはどうしても好きにはなれない。若者に似合わないようなイメージしかないんだよな。それに、何よりも、ウインザーノットの名の由来はウインザー公だけど、当のウインザー公はこのノットを使っていなかったんだよね。彼は特注の幅広で厚いタイをフォア・イン・ハンド(シングルノット)で結んでいたのだから。
私自身はネクタイを結び始めた頃から、かなり長い間フォア・イン・ハンドを愛用していた。これの欠点はタイが余ることで、小剣の余りをシャツのボタンの間から腹に突っ込んで隠して使っていたのだが、これを初めてタイを使う子に推奨するのもアレかなあ、と思うわけだ。
ということで、その子にはハーフウインザーを教えておいた。まあ無難だろうし、野暮ったくもならないだろうから。後で、父親辺りにしたり顔でウインザーノットを教えられて、結局それだけが「正しい」ような顔をして生きていくのかもしれないが。
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この本に出てくるキャベンディッシュという結び方。この本は廃刊になって結構経つのだが、タイを常用する人は持っていて損のない本だと思う。