自己紹介をさせてほしい。
25歳で女ということを鑑みても、東京では低賃金労働者の部類だ。
では暮らしぶりはどうかというと、さほど困窮しているわけでもない。友人とルームシェアをしているので住む場所はある。三度きっちりと食事をとる。週末は友人と飲みに行くこともできる。それこそブランド物の服やバックは一つも持っていないが、着るものは一応ある。
その通りだと思う。現に私は生きているのだから。
だが月並みな言葉だが、何かが足りない。衣食足りて礼節を知るとはいうが、本当にそうなのだろうか。
倫理道徳以前に、今の私は他人のために割くメモリがない。なずむような現実をただ過ごしていくのでいっぱいいっぱいだ。
「憂いも辛いも食うての上」とはよく言ったもので、しかしこれが最も心を腐らせる。
下手に生きているから苦しいのだ。「まだ最悪ではない」「食っていけないわけではない」「赤貧ではない」「仕事にやりがいがないわけではない」という「ではない」意識を積み上げているうちに、「生きている」から「死んではない」という状態に爛れるのだ。
消去法的に自分を定義していくうちに、今後どうありたいかを考えなくなった。
多分もう、何にもなりたくないのだと思う。