私は快便だ。
今まで便秘で悩んだことはなかった。
とは言っても私は酒飲みだ。
お酒をよく飲む人は知ってると思うが、総じて便は緩くなる。
ましてやそれが30数年続けば尚更である。
緩いのが普通だった。
常に緩かった。
それは水分が多かった。
絞り口の周りにはティースプーン1杯より少し多いくらいのおまけが付くのが常だった。
まずは絞り口の周りを拭う。
二度、三度、四度。
その後ようやく口を拭う。
いきなりウォシュレットなどはもっての外。
そんな日常を過ごしてきたが、ここに来て体調を崩してしまった。
酒の飲めない日々がしばらく続くと、緩かった物が固さを帯びてきた。
「そんなもの出せないっ!」「通るはずが無いっ!」
絞り口は悲鳴を上げる。
括約筋の力を使いゴルフボールの形をなんとかラグビーボールのように変形させる。
細く、長く、切れず血が出ないように。
兎のように「コロコロ」と出ない以上、出来るだけ絞り口に負担をかけないように。
時間をかけ、ようやくラグビーボールを出し終えて便器をのぞき込んで驚愕した。
そこに居たのはラグビーボールに変形された球体では無く、それはそれは見事な
見事な 一本糞 であった。
人間を50年近くやってきて、1万数千回の排泄を経てなお、
そこに感じたものと、実際のモノとがこれほど違うのかと!
ただただ愕然とし、それでも「大」のボタンを押せども、それは流れなかった。
通常よりも固さを得たそれは、「大」の流れ程度ではびくともしない存在感を放っていた。
私はそっと便座のフタを閉じ、その場を後にした。