2017-10-23

妻に「もう喋るな」と言われた日

俺は、よく喋る。

自分でもなんでこんなに喋るんだってほど、人がいたら喋る。

もともと人見知りの方であったし、それは今も変わらないが、それに反比例するように次々と喋りかけてしまう。

おそらく人に対しての防御として喋っているのだと思う。

そんな俺が彼女出会えのは奇跡だろう。

彼女はずっとペラペラと喋る俺のことをじっと見て、うんうんと相槌を打ちながら、時には同意し、時には反論し、ちゃんと俺の聞いてくれていた。

ああ、ちゃんと話を聞いてくれているんだな、と安心した。

そんな俺を認めてくれた彼女関係を深める中で、実は彼女妊娠させてしまったのだ。

情けないことだが、結婚前だった。

そのことを報告されたとき、俺の視界がおかしくなったのを覚えている。

いつも以上に口調が早くなり、吃り、そして会計ないことをベラベラと並べ立てた。

考えがまとまらなかった。妊娠結婚大学は?(当時、俺と彼女は在学中だった)

そんなとき彼女が言ったのがこの言葉だった。

「もう、喋らなくてもいいよ。私、分かってるから

……ああ。この言葉にどれだけ救われただろうか。分かってくれる、それだけのことがどれだけのことか。そしてどれだけそれに飢えていたのか。

とにかく、それから俺は覚悟を決めた。いろいろなところに挨拶をし、いろいろな人の力や知恵を借りた。

必死に働きなんとか大学も出ることができた。(これは本当にいろんな人に迷惑をかけた)

結婚してからは外では喋り続けることは変わらなかったが、家ではだいぶそれも減った。

喋らなくても伝わるようになった、というのが正しい。

それもそうだ、思えば俺は両親や兄弟などにはそんな発作が起きることはない、つまり彼女は俺の家族となったのだった。

どれだけの恩がなのかは計り知れない。彼女子供が家にいるということだけで、そして喋らなくてもわかってくれているということだけで、俺は救われている。

彼女を守り、幸せにすることが俺の恩返しなのだ。そう思った。

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