2017-06-05

ずるいおじさん

式場で打ち合わせと試着。

彼が「素敵です。とても似合っています」と言ってくれたドレスは、

私も気に入っていたのだけど、

これを選んだら、彼の言うままに決めたみたいに思われそうで、

別のドレスにした。

 

夕食に連れていかれたのは、

会社帰りによく行くビールのおいしいお店の、姉妹店。

よほど気に入っているんだろうな。

3回注ぎのビールをお互い3杯ずつと、赤ワインを1本。

ソーセージラム肉パクチー

チーズはちみつピザ

 

お店を出てすぐに、手を繋がれた。

「次」を誘われていることは、

分かりすぎるほどに分かるのだけれど、

昔ならこんなときの彼の手は

もっと震えていたよな、と思った瞬間、

「いろいろ疲れたから今日は帰るね」

という言葉が出ていた。

彼は一瞬、意外そうな表情を浮かべたけれど、すぐに

大丈夫ですか? 送っていきましょうか?」と言ってくれた。

その厚意をやんわり断り、JRの改札を抜けていった。

 

  

日曜日、こめかみの軽い痛みで起こされてから2時間後、

「おじさん」がやって来た。

「おじさん」には奥さんと娘がいる。

3年ほど「おじさん」と付き合っているのだけど、

会社の後輩だった彼との結婚話がとんとん拍子に進んだので、

私にとっては「好きな人から「おじさん」になった。

体の関係のある「おじさん」。

 

「おじさん」は、彼と比べれば自分勝手で下手くそだ。

でもきっと、結婚後の彼も、「おじさん」と同じぐらい

自分勝手で下手くそになるんだろうな、と予感している。

 

「もうすぐ結婚なのに、いいの?」

「駄目」と言われないことを確信した質問に、

「駄目」と言いたくなるし、

ずるい人だと分かっているのだけど、

そんなずるいところが私は好きなんだろう。

「いいの」と甘えてしまう私は、

少しよくないと思う。

 

「おじさん」は16時過ぎに帰っていた。

スマホには彼からLINEが届いていた。

「体調大丈夫ですか?」

課長に依頼していたスピーチOKをもらいました。家族会議で決めたらしいですよ」

今日大学時代の友だちと飲んできますね」

 

私は、冷蔵庫の余り物でビールを飲みながら、

「今まで寝てたら治った。大丈夫!」

「笑」

「飲み過ぎちゃ駄目だよ」

と返信した。

 

1時過ぎに寝た。

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